The two Jade Knights

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「均衡の護り手はまず、己の心の均衡を保たねばならぬ」
師は威厳ある声で、騎士見習いに向かって戒めの言葉を発しました。
「心の波を静めるのだ。決して乱してはならぬ」
「それは感情を殺すと云うことなのでしょうか」
騎士見習いは些か腑に落ちない様子で尋ねました。
「殺すのではない。囚われを棄て己を支配するのだ」
師は青白く光る刀身に、己の貌を映しました。
「心を鏡のように磨け。其処に何が映るか見定めよ」
すると、弟子は囁くような声で云いました。
「……私はそれを知るのが恐ろしいのです」
師は見える方の目を伏せて思案しました。
そして剣を下ろすと、幽かな溜息と共に云いました。
「君は君の敵のことを良く知る必要がある」
「私の敵? 帝国のことですか?」
いいや、と師は頭を振って、弟子に背を向けました。
「己の敵はいつも己の内にあるものだ」
師は剣を収めると、そのまま行って仕舞いました。
弟子は遠ざかる後ろ姿を見詰め乍ら、いつにも増して低く響いた喉声を思い返していました。