スワロウズ・テイル

雨上がりの街角を、一人の少年が駆けて行った。
今にも潰れそうな靴で、水面を翔る水鳥の様に。

カフェのパラソルの下で、一人の紳士が新聞を読んでいた。
今にも落ちそうな眼鏡で、明日を見徹す占術師の様に。

その紳士のすぐ側を、一人の老人が通り掛った。
今にも曲がりそうな杖で、歩きを覚えた立木の様に。

「カカオの価格が高騰するようですな」
「ほう、それまた何故?」
「現地でクーデターが起きたのだとか」
「やれやれ、また戦争か」

そんな彼らの頭の上を、一羽の燕が掠めて行った。
今にも折れそうな翼で、紙で折った曲芸機の様に。